北海道新聞帯広支社
Hokkaido shimbun press Obihiro branch




 当エッセー教室は、北海道新聞帯広支社が主催。現在帯広はじめ鹿追、大樹、芽室、上士幌の計5会場で開いており、合わせて90人を超す方々が専任講師の指導を受けながらエッセーの書き方を学んでいます。教室は月1回のペースで開かれ、毎回受講生が作品を持ち寄り、作品の講評を講師から受けます。受講は4月から翌年の3月まで。




「父と動き出した時計」 中山 由香里(56)=帯広市*帯広会場 2018/04/18

 一月十四日に、父の三回忌法要を終えた。その数日後、七〜八年ずっと止まったままの、父が大切にしていた振り子時計が突然動きはじめた。驚いた。
 半世紀以上前から、我が家と一緒に歩んできた時計だ。給料の三分の一の値段で高かったが、どうしてもほしくて購入したと、母がいつも話してくれていた。赤ちゃんだった私も振り子を見て手をたたき、大喜びしていたらしい。
 時を刻まなくなり、修理にだしてみたが、直らなかった。父は何度もネジを巻いたりして、あきらめきれない様子だった。その後は、我が家を見守る動かない時計として階段の壁を飾ることになった。父が亡くなってからも、ずっとそのままだった。
 チクタク、チクタク、ボーン、ボーン。久しぶりに聞くその音は、とても懐かしく安心するものだった。「なぜ急に」「二月の試験に向けて頑張っている息子へのエールだ」と感じた。息子は、挫折も味わい、たくましくなっていたが、母として心配ばかりしている時だった。「大丈夫だ」と父が言っている気がしてうれしかった。試験が終わり、数日すると力を使い果たしたかのように、再び時計は止まった。もう何も音がしない。
 壊れた古時計が、たまたまちょっと動いたというだけかもしれないが、父に守られている気がした不思議な出来事だった。
 「心配してくれてありがとう」。時計に向かって頭を下げた。


 
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