北海道新聞帯広支社
Hokkaido shimbun press Obihiro branch




 当エッセー教室は、北海道新聞帯広支社が主催。現在帯広はじめ鹿追、大樹、芽室、上士幌の計5会場で開いており、合わせて90人を超す方々が専任講師の指導を受けながらエッセーの書き方を学んでいます。教室は月1回のペースで開かれ、毎回受講生が作品を持ち寄り、作品の講評を講師から受けます。受講は4月から翌年の3月まで。




「旅行ぎらい」 田中 順子(90)=帯広市*帯広教室 2019/07/10

 旅行したいと思ったことはない。
 あんな所に行ってみたいとか、こんな所に行きたいとかを考えたこともない。
 東京には姉、弟、私の長男などがいたので用事のある度に行ったが旅行ではない。
 夫が定年になった時「外国でも行ってみるか?」と言ったけれど「アンタと行っても面白くない」と言ったら、むくれてしまった。そして、どこにも行かなかった。
 キャサリン・ヘプバーンの「旅情」のような旅行ならしてみたかったけれど、それも夢のまた夢であった。
 13歳の3月に小学校を卒業し、その月のうちに函館の遺愛女学校の試験を受けに行った。母は帯広に戻ったが、私は夏休みまで一度も帰らなかった。
 鈍行で16時間。私は駅弁すら買えない子供であった。その頃は家に御(ご)用聞きの人が来ていたし、姉たちもいたから買い物などしたことがない。それに知らない人の前で食べたことがないから、買ったとしても食べられなかったと思う。飲まず食わずで16時間、じっと座っていた小さな私。年に3回の休みには必ず帰って来たのに、いつまでも成長しない私だった。
 旅行ぎらいは、そこから始まっていたのだと思う。ポツンと一人で座っていた小さな私を思い出す。懐かしい帰らぬ日々であった。
 旅行など行かなくても、ネコたちと楽しく暮らす毎日を気楽に元気な日々を送りたい。


 
 バックナンバー
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