北海道新聞帯広支社
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「なんか、いい。」 清水 宮子(66)=本別町*帯広教室 2018/06/27

 結婚したばかりの息子夫婦が、夫の誕生日にプレゼントを持ってやって来た。傘のマークの真っ白なベルトと紺の帽子。ゴルフ用だ。明らかに新妻の配慮である。顔がほころびっぱなしの夫。やたら声がでかい。
 翌月、今度は私の番だ。さて何をくれるのか。ちょうど金曜日。仕事を終えて帯広から駆けつけるに違いない。風呂にも入らず待ったのに、来なかった。明日だろうか。いや、もしかすると嫁は知らないかもしれない。なにせあの息子、親の誕生日なんてまともに言えたためしがない。父はかろうじてクリアしたが、母までは及ばなかったか。
 バツの悪そうな二人の顔が浮かぶ。息子は嫁にグチグチ責められるなあ。
 翌日も待ってみたが、やはり来ない。ところが夜になって、突然現れた。「誕生日は昨日だし」。ついこぼれ出る。「平日に来れるはずないしょ」。あっさり片付けられた。
 分厚くて重い包みが手渡される。見当もつかないまま解くと、最新式の地図帳が顔を出す。息子が中学生の時の教科書を愛用していた私。今はない国や町村が掲載されていて少し使いにくかった。見かねたらしい。
 えんじ色の高そうなボールペンも出てきた。重さが心地よく、びっくりするほど滑らかに書ける。これはエッセー用だろう。
 結婚した息子が少し大きく見える。新妻にあれこれ語り、仲良くプレゼントを選んだんだろうな。なんか、いい。


 

 

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