北海道新聞帯広支社
Hokkaido shimbun press Obihiro branch

「カタクリ」 柿田 好子(73)=帯広市*帯広教室 2018/05/30

 道新の朝刊で「堀田清の薬草帖・カタクリ」の記事に目をとめた。春の妖精の一つとある。花の写真に見入っていると、三人でカタクリの群生地を訪れた十数年前のことがよみがえった。
 花は、六花亭製菓の包装紙に描かれている。坂本直行画伯のものだ。だが、本物は見たことがなかった。
 ある日、野草に詳しい同僚のAさんの運転で、Mさんを誘い、岩内仙峡へ出かけた。目的地少し手前の林道を右に入って迂回路(うかいろ)をしばらく進んだ。すると林の一角にカタクリの花が見事に咲き誇っていた。木漏れ日を浴び、春風にゆれている。
 その可憐(かれん)な紅紫色に魅せられた。
 小半時も経(た)ったろうか。その場を去りがたく「三本くらい家の庭に植えてみようかな」欲の虫が顔を出した。Aさんがショベルで掘ってくれる。帰宅後、家の庭に移植して、二週間くらい楽しませてもらった。
 翌年、雪が消えても庭のカタクリは芽が出すことはなかった。記事によると「多年草で一粒の種から花を咲かせるまでに八〜十年かかる」という。可哀想(かわいそう)なことをした。ずっと自然林で咲き続けられたものを。芽を摘んだ愚かな行為を恥じた。
 案内してくれたAさんは、三年前鬼籍に入った。あれから一度も思い出の地を訪ねていない。彼女を偲(しの)び、もう一度Mさんとカタクリに会いに行きたいと思っている。


 

 

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