北海道新聞帯広支社
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「やれやれ」 服部 園子(61)=大樹町*大樹教室 2018/05/23

 畑酪農家から畑作専業になって、初めての冬。忙しさを理由に後まわしにしてきた衣装ダンスの整理をすることにした。あれこれと引っ張り出すうちに、大事にしまってあった古いワンピースが出てきた。きょうはみんなお出かけだし、ちょっと着てみようかな…。
 ファスナーもボタンも無い、頭からスポンとかぶる木綿のワンピースは、ちょっときついけれど、ギシギシ身体をよじらせて、どうにか着ることができた。青い小さな花模様が大きく見えるのは気のせいかな? 鏡の中の還暦を過ぎたおばさんは、昔を思い出して、にっこり微笑(ほほえ)む。何だか、幸せな時間。
 ところが緊急事態発生! いざワンピースを脱ごうとしても、お肉が邪魔して、刺し網に掛かった魚のように、上にも下にも身動きできない。
 「どっ、どうしよう!」
 よりによって、鏡の前で悪戦苦闘の真っ最中に、玄関のチャイムが鳴った。
 こんな時は、居留守に限る。じっと部屋の片隅にうずくまり、息を潜める私。ガチャリとドアが開いて、「置いておきますねえー」と、聞き覚えのある宅急便のお兄さんの声がした後、車の発進音が聞こえた。
 「やれやれ」
 どうがんばっても脱げないワンピースには、最後の手段しかない。ウエストの縫い目に、ちょっぴりハサミを入れた。
 スルリと脱げたワンピース、もう、処分しようかな。


 

 

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