北海道新聞帯広支社
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「春うらら」 高原 都子(57)=帯広市*帯広教室 2018/05/09

 ほんの少し春を感じた日、息子が彼女を連れて帰ってきた。家族中を驚かせた結婚宣言から数カ月、彼女を紹介するという。二人を空港に迎えた時、私には妙な安心感と、急に年を取ってしまった感があった。外は氷点下だったけど、ネコヤナギが芽吹いていた。
 ちょうどこのころ、入院中の父の容体がよろしくなかった。眠っている時間が長くなって、点滴で栄養を補うようになっていた。入院前の父はどんなに具合が悪くても、孫の顔を見ただけで元気を取り戻すことができた。
 だから、結婚を決めた孫の顔を見たらきっと、と思った。
 二月の入院病棟はインフルエンザの流行で面会制限がかかっていた。患者一人に許可を受けた家族が一人だけ会えるようになっていた。とはいっても、そんなに厳しくはないだろうと思い「東京から息子が結婚相手を連れて帰ってくるので、会わせたい」と聞いてみた。ところが「特例は認められない」とのこと。インフルエンザは終息していたのに、だ。
 三月は大雪で始まった。息子たちの余韻があちこちに残っている。孫の顔を見られなかった父は、底なしの深い眠りに入ってしまった。春は「出会いと別れ」の言葉通りに進行している。
 おせっかいな友人が「息子の嫁」とのつきあい方を伝授してあげようか、と言ってきた。それはまた、別の機会に、ゆっくりお願いしたい。


 

 

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