北海道新聞帯広支社
Hokkaido shimbun press Obihiro branch

「もしものはなし・・・」 山本 常子(74)=大樹町*大樹教室  2018/04/11

 「ねえ、みんな、いま、一億円あったらどうする」。真顔で冗談めかして尋ねる友。
 「うーん、この歳(とし)で一億円かあ。持って死ねる訳(わけ)ないし、思いきり豪遊するとして、周り皆に大盤振る舞いをして楽しく使う」と私。
 「有りもしない一億円なんて、考えるだけ損。面白くもない」と強い口調で言いきった友。「これって損得の問題でないっしょ、もしもの夢のはなしだもの。だから、あんたってつまらないんだよ、何でも損か得かで考えるんだから。パアッと使ってしまおうって発想にならないかなあ。夢のはなしに損得勘定、それこそつまらなくて面白くもない。こんなところに人間性も性格も出るのよね」
 何十年来の付き合いの仲良し六人組の新年会、アルコールの力もいささか手伝って言いたい放題。年齢や環境、考え方の相違もあるが、相手が傷つくような言動を慎んで譲り合って来たので、喧嘩(けんか)にまで発展することもなく、親しい間柄を今日まで続けてこられたと思う。
 「まあまあ、はいそこまで」と仲裁に入った私だって、正直持ってもいない一億円の使用方法を言い出すなんて呆(あき)れているし、無駄な思案と怒るのも解(わか)るが、譲らぬ両者に分け入っていく気力はない。
 世間では、当たらず触らずの儀礼的な会話を交わすのが大人の分別と思われているようであるが、でも、この度は気心が知れ合った者同士、忌憚(きたん)のない日頃の鬱憤(うっぷん)を吐き出したらすっきりするはず。私は側で議論の行方を見守らせて貰うことにした。


 

 

北海道新聞社ページへ
戻る