北海道新聞帯広支社
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「劣等生か優等生か」 戸塚 正太郎(69)=新得町*鹿追教室  2018/03/07

 高校一年生の時、私の所属する柔道部にKという一年先輩が入ってきた。目立たない人で、私と同じく練習してもモノになりそうもなかった。
 入部して間もなく柔道部をやめると言い出した。怒った部長が「入部してすぐやめるとはなんだ」と怒鳴りまくったが、退部してしまった。
 彼が三年の終わり頃、今度は成績が悪くて卒業できないと周囲が騒ぎ出した。
 同級生に高橋という人格者の級長がいた。
 「なんとかクラス全員揃(そろ)って卒業できないものか」と考え、試験の時、彼の隣に席を持ってゆき、どの科目も答案用紙を交換した。
 不正行為はバレずに済んだ。「イヤ、先生は彼等(かれら)のことを知っていたが黙認したのではないか……」と言う者もいた。
 兎(と)にも角にも彼は卒業し、就農した。
 それから数年経(た)ち、新聞に「豆つくりの上手な人」としてKさんが紹介され、彼の随筆が定期的に掲載されるようになった。
 「落第しそうな人」というイメージしかなかったが、農作物を作ったら読み書きよりも性に合ったみたいだ。
 惜しいことに、彼はその後、自ら命を絶ってしまった。
 五十年経った今でも、私の地域では、「豆つくりに熱心な人」として彼の名を覚えている人がいる。
 彼のことを思い出す度、「学校の勉強とは何なのか」と考えさせられる。
 今は、彼の息子さんが農業を継いでいると聞く。


 

 

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