北海道新聞帯広支社
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「ミルキープリンセス」 市川 スナ子(78)=帯広市*帯広会場  2018/02/14

 昨年の秋、他界して20年になる夫あてに茶封筒の手紙がきた。「差出人○○」と名字だけだ。
 夫の教え子に同じ名字の子がいた。50年前のことだ。一度捨てた手紙を、開封して見た。
 「低農薬で新種の米作りに成功した。銘柄はミルキープリンセス。10月末初出荷の予定」。パソコン打ちで、いたって簡潔な内容である。注文用はがきの宛先は、秋田県潟上市……と電話番号、○○○○行きとなっていた。
 平成の初め、竿灯(かんとう)祭りで賑(にぎ)わうホテルの前で“減反政策反対”の旗を立て、「あきたこまち」を売っている大潟村の農民同友会の人たちがいた。
 私は、毎月10キロの「あきたこまち」を送ってもらう手続きをした。
 この年、東北地方は冷害で、米の収穫は皆無だった。翌年、政府米を売っている米屋は国産米が不足、外米で対応していた。
 そんな時、同友会は「お宅の分は何としても送っから」といってくれた。その人が○○さんだった。電話番号が同じだ。
 近くのスーパーで、道産米を買うようになってから、14、15年になる。
 当時の礼をと思い電話したら「おやじはいねくなった」と言う。2代目だった。「低農薬で絶対に旨(うま)いから食べてみてけろ、自信あるんだ」と言いきった。
 秋田弁で素朴に抱負を話す2代目を思って味わうミルキープリンセスは、粘りがあって美味(おい)しい。
 夫にも供えたら「旨いなあ」だって。


 

 

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