北海道新聞帯広支社
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「夢中で遊べた頃」 松田 陽子(66)=幕別町*帯広会場  2018/02/07

 年末年始に放送されたNHK教育テレビの「香川照之の昆虫すごいぜ!」が興味深かった。
 カマキリの着ぐるみを着て、捕虫網片手に嬉々(きき)としている姿には、ドラマや映画での個性派俳優の雰囲気はない。
 それは、「昆虫大好き少年、香川」の顔だ。そのせいか、彼の昆虫解説が、これまた実に面白かった。
 私にも、昆虫や自然相手に夢中で遊んだ子どもの頃があった。
 当時父は、隣町の遠縁の家によく私を遊びに連れて行ってくれた。そこは周囲に豊かな水田が広がり、水路や小川が流れ池もある。あぜ道を歩くと、昆虫図鑑を開いたような世界であった。
 私は何よりも、立派な四枚の羽で悠然と飛行している大きなトンボに目をうばわれた。
 「あれがオニヤンマ。あれはギンヤンマ」。遊び相手の男の子が色々(いろいろ)と教えてくれた。特にギンヤンマは羽の輝きもさることながら、体や眼(め)の色が光沢のある青と緑で美しい。その姿をどこまでも目で追っていたような気がする。
 池は蛙(かえる)や魚や水生昆虫の宝庫だった。タガメが黒い鎧(よろい)でじっと餌を狙っている。その様子を見ているだけで飽きなかった。
 一週間ほどいても、遊びに夢中で過ごす時間はあっという間だ。迎えに来た父に毎日のエピソードを次から次と話した。「そうか、そうか」と笑いながら頷(うなず)いていたその父が逝って、一年が過ぎる。子どもの夢中さを共有してくれる父だった。


 

 

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