北海道新聞帯広支社
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「もう一つの今」 綱島 修(63)=幕別町*帯広会場 2017/11/15

 片道一車線の国道。夜、車で自宅へ向かっていた。前には大型トラック。荷台からは長い電柱が突き出ている。先には赤い旗も見える。
 中学生の頃に読んだマレイ・ラインスターの「もう一つの今」というSF小説を思い出した。
 夫の運転する乗用車の助手席に妻。前方には長い鉄材を積んだトラック。その車が急ブレーキを踏んで鉄材が助手席に突っ込んできた‥。そんなシーンから始まる衝撃的なストーリーだった。
 今、トラックは制限速度を守っているし、何の問題もない。だが、ひょっとして、電柱が荷台から落ちてこないだろうか? 喉元にナイフを突きつけられているような気分だ。徐々にイライラが増してきた。トラックを追い越してしまえば、どんなにすっきりすることだろう。
 そんなことを考えていた時だった。後ろに着いていた軽乗用車が対向車線に出ると、一気に追い越しをかけてきた。私の車とトラックを抜き去る。
 すると、私の後方で赤い光が点滅。サイレンが鳴り響いた。警察の車だった。一瞬、私かと思ったが、それは軽乗用車を追って前方の闇へ去っていった。
 やがて、左の路肩に二台の車が停(と)まっているのが見えた。後ろは覆面パトカーだろう。後部座席に若い女性の姿が見えた。
 先に追い越しをしていたら、あれは私だった。
 通り過ぎる軽乗用車を眺めていただろう。


 

 

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