北海道新聞帯広支社
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「そうだったの」 高橋 直子(65)=芽室町*芽室会場 2017/11/08

 隣に住むTさんは80歳を出ていると思われる。私が引っ越して11年、それからの付き合いだ。付き合いと言っても、外で出会えば挨拶(あいさつ)をし立ち話をする程度の仲である。
 私もTさんも一人で暮らしている。
 これから雪の季節がやってくる。これが厄介だ。人に頼むほど広い敷地ではない。それでも自家用車を出し入れする作業は必要だ。自分が歩くだけの細い道ならいいのになあとしばしば思う。
 Tさんは車を持たないけれど、時々帰省する二人の子供さんの為(ため)に、駐車場を広く確保しておく。
 引っ越して初めての冬。私が朝6時に雪かきをしようと外に出た。隣はもう終わりに近づいて、竹箒(たけぼうき)を手にしている。彼女の雪かきの最後は箒の目の跡がつくのだ。
 「何時からやってるんですか」と訊(たず)ねてもニコニコしているだけで答えてもらえない。だからと言って怒る仲ではないし、次から負けまいともしない。
 彼女の敷地内はいつも手入れが行き届いて、自宅の花壇には小さな花が咲く。ゴミや落葉が落ちているのを見たことがない。
 先日、私がゴミ出しに行くと、Tさんが庭箒で歩道の掃除をしている。
 冗談で「あんまり綺麗(きれい)にしないでね、わが家が目立つから」と言うと「貴女(あなた)が綺麗にするからよ」と返ってきた。えっ、そうだったの。いえいえ、足元にも及びません。


 

 

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