北海道新聞帯広支社
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「トマトのお礼」 清水 宮子(65)=本別町*帯広会場 2017/10/04

 2軒隣に住むKちゃんが、お父さんと一緒にトマトを持って来てくれた。礼を言うと小さく笑い、お父さんの脇をすり抜けて行ってしまった。
 「おいしいトマトをもらったので」と娘に代わって説明するお父さん。「庭の花、娘たちが楽しませてもらっています」と頭を下げる。どうやら花のお礼らしい。今年の庭はひときわ華やかだ。白と赤と黄色の花がそれぞれこんもり生い茂り、背後にオレンジ色のコスモスが咲き乱れる。
 毎日庭の手入れをする夫は、道行く人とよく話をしている。Kちゃんや一年生のお姉ちゃんとも、なんだか仲が良さそうだ。「めんこいんだ。おじさーんって、手、振るんだ」。とろけそうな顔でしゃべっていた。
 その夫がちょうど外出から帰ってきた。お父さんから「トマトが大好きなK」と聞くと、ずっと歩道を行ったり来たりしていたKちゃんを呼んだ。
 「ミニトマト、とってみるかー」
 ふっ飛んできたKちゃんは、夫と一緒にトマトをもいで、とびっきりの笑顔でお父さんと帰って行った。
 きっと家に入るなりKちゃんは、たった3個のミニトマトを誇らしげに見せるだろう。お母さんは「トマトを持ってって、トマトをもらってきたの」と、呆(あき)れて笑うだろうな。Kちゃんは、それでもきっと得意顔をするだろう。お花の裏のミニトマトのこと、知っちゃったんだから。


 

 

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