北海道新聞帯広支社
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「摘出」 井戸 真由美(56)=帯広市*帯広会場 2017/07/12

 これまでに体内の器官をいくつか摘出した。
 その一つは『へんとう』。慢性のへんとう炎で20代までたびたび高熱を出していた。ほかにも影響が出るからと言う理由で、へんとうを摘出した。手術の後「珍しいほど大きい」と、ホルマリン漬けにしたものを医者がくれた。まるで梅干しの種。それ以降、高熱に苦しむことはなくなった。
 次は『虫垂』。28歳のある朝、猛烈な腹痛に襲われた。七転八倒のもがきように、母が「虫垂炎じゃない?」と一言。父が車で病院へ運んでくれた。白血球が増えていないから本当に虫垂炎?と疑う医者に「絶対そうだ。とにかく切ってくれ!」と私。結局、下半身麻酔で手術台に上がった。
 手術中「あ、虫垂なんでもないですよ」と言われ驚いたが「この際とっちゃって」と頼んだ。無影灯の縁には私の内臓が映っていた。
 退院の日、深紅の血尿が出たが「ぼうこう炎だったかな?」という医者の言葉を信じて帰宅すると猛烈な痛みが、再び。病院に戻って診察してもらうと「腎臓結石だったね」と医者が笑った。なんと結石の痛みを勘違いして虫垂を切ったのか‥。おかげで一生虫垂炎の痛みを経験しなくてよくなったけれど、心は複雑。
 ところで、最近風邪気味になるとへんとうが腫れたような感じがして熱も上がるようになった。摘出したへんとうが知らない間に喉に戻っていたら‥。戻るところを探していたのだとしたら‥。行方不明の小瓶を探さなくては。中を確かめたい。


 

 

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