北海道新聞帯広支社
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「ギフト」 綱島 修(62)=幕別町*帯広会場 2017/05/10

 家に帰ると、郵便受けに妻宛(あて)の宅配便の不在票が入っていた。
 中身は鎌倉のRという店の焼き菓子らしい。ネットで検索すると、ジャムと焼き菓子の洒落(しゃれ)た店だった。差出人は横浜市のNさんという女性のようだ。再配達を業者に連絡するのは、産婦人科病院で働いている妻の確認を取ってからにしよう、と思った。
 帰宅した妻に聞いてみると、心当たりがないという。次々に不安の種が芽吹いてくる。
 開けた途端に爆発したり、腐ったものや切断された手が入っていたりしたら、どうしよう。「送り付け詐欺」もある。差出人の番号にかけて、妙な電話がくるようになっても困る。宅配業者へ受け取り拒否の電話をすることにした。
 ところがその前に、二世帯同居している八十九歳の父が、小さな段ボール箱を受け取ってしまった。ただの焼き菓子にみえる。でも、一度開けてしまうと受領になり、受け取り拒否で返せない。
 横浜にいる娘にラインで訊(き)いてみた。
 「私も知らない人だよ。出産祝いでない? 職場関係かも?」と、返信がくる。
 翌日、病院から妻のメールが入った。
 「先生の娘さんだった。うちの病院で出産し、スタッフでお祝いを贈ったのよ」
 その夜、帰宅した妻とギフトのクッキーを食べた。お洒落な味がした。防腐剤を使っていないため、賞味期限まであと一日だった。


 

 

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