北海道新聞帯広支社
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「あいた口がふさがらない」 福井 えり子(62)=帯広市*帯広会場 2017/02/22

 年末のことである。
 近くのスーパーへ寄った。休日には、大概タイムセールがあって混み合う。できるだけ避けたいが、どうしても必要なものがあった。
 「今日は何が安いんだろう」と思いながら、目的の物だけをカゴに入れてレジに並んだ。すると、レジ前の棚の所にカートが置いてあって、カゴの中に卵と砂糖が四個ずつ入っていた。誰かが置いたものなのか、それともお店の人が置いたのか、今日のお買い得品?
 前に並んでいる人を見ると、手に卵と砂糖を一個ずつ持っていた。まさかねえ。
 五十代くらいの婦人だった。
 精算を済ませると、包装台の上にすでに置いてあるカゴの中にそれを入れ、先ほどのカートの所へ回って行った。そして今とは別のレジの列へ並んだようだった。
 何と大胆な行動だろう。しかも、包装台の上のカゴには、すでに卵と砂糖が数個ずつ入っている。
 あいた口がふさがらない、とはまさにこの時の心情だ。お店の人だって気づかない訳はないのに。
 “お一人様一点まで”という決まりは、何の意味もなしていない。
 あの人の心臓には絶対に毛が生えている。もう一度じっくり顔を見たいと見回してみたが、人混みの中、めんどうになった。年末は忙しい。どうでもいいや。さっさと店を出た。


 

 

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