北海道新聞帯広支社
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「ひとのふり見て…」 海富 智恵子(59)=帯広市*帯広会場 2017/02/01

 「ちゃんと食べなさい」。長男はそう言って、娘の皿のお餅を一口大に切り分けた。
 網走から遊びに来た孫娘は、もうすぐ五歳。素直に「はい」と言うことはめったにない。「だってさー」と、まずは言い訳。それから「あのね、キリンはね…」なんてちょっと話題をそらしたりする。ここで油断してはいけない。その後には「それならさー」で始まる彼女に有利な妥協案の提示が待っている。心して立ち向かわないと丸め込まれる。
 嫁にはしょっちゅう「いいかげんにしなさい!」と叱(しか)られている。でも全く懲りていないようだ。
 彼女と私は誕生日が同じである。性格も似ていると長男は笑うけれど、そうだろうか。私はあんなに面倒くさい女ではない。…はずだ。
 あまり言いたくないけれど、実は私も「いいかげんにしなさい」「何回言われたらわかるの!」と、よく母に叱られていた。おそらく同じような子どもだったに違いない。
 だけど、今は違う!と信じたい。
 やっとご飯を食べ終わった孫娘。今回は熱を出してお留守番になった弟たちに手紙を書き始めた。ああでもない、こうでもないと言いながら選んだ便箋に色鉛筆で書いた水色の文字がおどる。
 『おかあさんのゆうことをきいてね。/おねえちゃんより』
 己を知るのは難しい。


 

 

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