北海道新聞帯広支社
Hokkaido shimbun press Obihiro branch

「指揮は恥ずかしい」 清水 宮子(64)=本別町*帯広会場 2017/01/25

 久しぶりに見た学習発表会で、5年生の合唱に耳を奪われた。アンジェラ・アキの「手紙」を情感豊かに歌っている。男性教師の巧みな指揮が子どもらの声をリードするのだ。左手が優しく上下左右に舞っていた。
 私は合唱でも器楽でも、指揮をするのは気恥ずかしくて嫌だった。大規模校では音楽の得意な教師がしてくれたが、小規模校では自分がやるしかなかった。
 赴任したのは全校児童が60人ほどの学校だった。5・6年生の器楽「ロッキーのテーマ」を何とか仕上げ、学習発表会の当日、指揮棒を手に私は子どもらの前に立った。
 背中がむずがゆい。大きな尻や短い脚を見られるこの場所は、どうにも落ち着かない。<新しく来た先生はちゃんとできるのかな?>そんな視線も痛いほど感じる。
 とにかく集中した。音がずれないように、リズムが乱れないように、私は必死で指揮棒を振った。何とか無事に終え、ほっとした。
 「器楽うまかったなー先生」。慰労会の酒の席で、ほめてくれたAさんのお父さん。「左手どしたのよ」「はい?」「脇にくっついたまんま、1回も上がらなかったぞ」。あらら。そんなとこも見てるの?
 翌年から左手も使って指揮をした。取って付けたようで何ともぎこちなかった。
 5年生のあの指揮者の動きは実に滑らかだった。私も練習すればできたのだろうか。ああ、でもどんな顔をすればいいんだろう。


 

 

北海道新聞社ページへ
戻る